たより

福岡市 杉山龍丸

 

 

 

お変りありませんか。庭の柿の実も真赤になりました。その柿をみつ

めて、ふと、ああ、遂に今年も終りつつあるな、と思いました。べ平連

も解散と聞きました。小田実君とも鶴見君とも久しく会いません。京都

での会議で、ブラックパワーとゲバ学生パワーとの結合をみて心配して

いたことが現実になったようです。

私は相変らず、インド、アジアの人々の生活を向上させる仕事を一人

でつづけています。本年ようやくガンヂー翁記念国民財団の方で、私の

やり方によるセンターを作ることになったのですが、印パ戦争でどうな

りますか。印パの戦いは、印度、パキスタンの戦争でなく、民族斗争で

すので、国境、政府でコントロール出来ませんし、中ソの間の国際的な

ものが背景にありますので、印パのみで解決出来ません。インデラ首相

の杜会主義政策が火をつけたものです。これは、ベトナム戦より、大き

な規模でアジアを混乱に巻き込むでしょう。

周恩来首相は国連に参加したことで高姿勢ですが、しかし、その土台

が大きく変化しつつあり、勃火が迫っています。このアジアに起る混乱

と勃火は、国連でも如何なる国も防ぐことが出来ません。これは公害と

経済危機が全世界的なものであること、人類がつくった文化というもの

の行きづまりが、このようになっている訳です。

我の知っているエジプト、イスラエル、ギリシャ、中近東、インド、

中国等、古代文化の地が廃墟の半砂漠になっていること、砂漠の中に、

ゴビ、サワラに有史前の廃墟があります。“東京の将来は”ということ

は、皆様ご存知の筈ですが、この文化の亀裂の場所、ひずみの皺寄せの

ところから、火を吹いている。この火は、アジア各地に飛火し、今の世

界の情況では、世界中に及ぶ可能性があります。これは、私が軍人で戦

争経験があるための妄想なのでしょうか。戦争は女性の悲劇と思います。

近頃の女性は武器をとる人もありますが。また、私が声なき声にかきま

した、悲しみが残るのかと残念でなりません。私の仕事は、戦争によっ

て解決しようとする人々のやり方より時間がかかります。

NHKテレビでご覧になったと思いますが、パキスタンから西ベンガ

ルに逃げて来た難民に支給していた米と大豆は、私が先年、インドの餓

死の問題のときに調査し、インドの人々の食事に蛋白質が少なく、イン

ドに大豆がありませんし、米のカロリーがたりないので、台湾の品種を

調査して、インドにすすめ全ガンヂー翁の弟子達にすすめて、作らせた

ものです。約五年かかってやっと今、役に立ってます。

私の悩みは、今造ろうとしているセンターも、今度、起こりつつある、

印パの戦争を引金として起こる混乱に間にあいません。この数ケ月悩み

した。私の力も財力も少く残りものを投じても何が出来るか判りません、

しかし決論として、やらねばならぬと考えました。べ平連が何で解散す

るのか、声なき声が何でつづいているのか判りませんが、私には中共が

国連に参加しても、この問題は解決しません。

インデラは、自分でつけた火の始末は出来ず、自分のやったことに理

屈をつけて、世界を歩き同情を求め、周恩来は高姿勢をしていますが、彼

等もこの勃火の中に涙するでしょう。

今日程、声なき声を高くあげねばならぬときはないし、本当の無罪の民

の生死をかけた、平和運動が展開されねばならぬときはならぬときはな

いと思います。私は何処までやれるか判りませんが、これにかけてみよ

うと思います。

私は一切を失うかもしれませんが、いつかお会い出来る日もあるでしょう。

 

(注、べ平連が解散するように杉山さんは書かれていますが、いま

のところべ平連は解散の話はありません)

十一月六日

 

 

声なき声のたより 53号(19711231日発行)

 

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