大島 育雄(おおしま いくお)

1947(昭和22)..〜

 

 エスキモーの民具の収集を目的に植村の3ヶ月後、極北の街シオラパルクに入り、結局そのまま

村の娘さんと結婚して住み着いちゃったという人物。村に来た当初、エスキモー達にとけ込むため

苦楽を共にした植村とは、日大隊のメンバーの一人として、「日本人北極点一番乗り」をかけて競い

合う事となる。結局、大島とピーター・ペアリー(北極点に最初に到達したペアリーの孫)有する

日大隊が一歩先に極点に到達し、大島は北極点に最初に立った日本人の一人となる。

しかし、日本人とエスキモーとの間の調整役は精神安定剤を必要とするほどきつい仕事だったら

しく、この事について本人はあまり語りたがっていない。

 

南極横断という人生をかけた夢を実現するための「過程」でシオラバルクを通りすぎていった植村と

は異なり、色々ある職業選択の一つとして「北極圏での猟師」を選んだといい、極北での生活も日常

生活の一コマとして淡々と語られている。もっとも、普通の人はそんなところに住めないし、銃も撃っ

たことがない、橇も使ったことがないといった状態から始めて、今では狩猟で家族を養っているのだか

ら本人が言うほど普通じゃないよな。とにかく自分でなんでもやってみるという精神が極北での生活で

は必要で、これが出来るからこそエスキモーの社会にとけ込めたのでしょうね。

 

植村と共にエスキモー(イニュイ)の文化を日本に紹介した功績は大きく、彼によってエスキモーの

生活を日本人が直接的に知ることが出来るようになったと言える。

「世界うるるん滞在記」の記念番組に出ていたので、結構知ってる人もいるかも。

 

参考文献

(1)エスキモーになった日本人 大島育雄 文芸春秋

始めて村に来てから、結婚、北極行、子供の誕生、植村の死などを経て、村に発電所が出来

電気のある生活が出来るようになる直前までの16年間の体験を綴った作品。

日本の生活とのギャップを感じさせる個々のエピソードやこれまでの人生経験も面白いが、

大島氏の経験に裏打ちされた「独立した個人としての視点」が感じられ、「愛と幻想のファシ

ズム」で村上龍が言っていたハンターの思考ってのはこんな感じか?と思ったりする。

はっきり言って、相〜当、面白い本。まだ書店で注文したら手に入るので、買って読むように。

植村の「極北に駆ける」や長尾三郎の「マッキンリーに死す」との併読を進める。

 

(2)アラスカ物語 新田次郎 新潮文庫

大島以前にもいた、エスキモーになった日本人。捕鯨船の乗員として航海中にアラスカ

のエスキモー村に入り、そのままそこで結婚し、誰よりもエスキモーらしいエスキモー

になった「フランク安田」の物語。精力的な海外調査を基に書かれた本で、フランク安

田に対する作者の思い入れに満ちた本である。

 

 

(3)北極点を目指す野郎達 読売新聞社会部 読売新聞社 

日本大学山岳部による北極点行の記録。旅がスタートしてからの大島の活躍ぶりは凄ま

じく、隊の中心として本人が謙遜して言うより遙かに働いていおり、日本人だけでなく

エスキモー達をも感心させている。胸を張って良い業績だと思うが、本人が北極行につ

いてあれほど語りたがらないのは、空輸の際に村人達が大切にしていた犬の多くを死な

せてしまったことにあるのだろう。その時の大島のパニックぶりは相当に痛々しい。

 また、ハンティングの快楽について語っている箇所は必読〜。

 

(4)愛と現像のファシズム 村上龍 講談社文庫 

大島のいう「ハンティングの快楽」を知る男を主人公とした近未来政治小説。ハンター

が生き物としてどれだけ優れているか、狩の快楽がどれほど凄いかを、わかりやすく伝え

てくれる。大島の本を読む前に読んでおくことをお薦めします。狩の対象がムース(ヘラ

ジカ)ですらこれほど気持ち良いんだから、大島のように、北極グマを追いかけて倒す

快楽は凄まじいものがあるでしょうね。

 

(5)冒険家の森 C.W.ニコル 田淵義雄監修 クロスロード 

表紙がC.W.ニコルで、ビーパル系の出版なので、まぁアウトドアブームに乗って作った

軽い本だろと思っていたが、中身は専門家によってジャンルごとに(登山、漂流実験、

砂漠行、極地、アフリカ探検、シルクロード探検など)かなり詳しく書かれており、

かなり良くできた内容。大島育雄や上温湯隆、アラン・ボンバールなどの存在は、この

本で知った。東南アジア方面の探検家とクストーのような海洋探検家があれば、ほぼ完

璧な内容。当たりの本ですが売ってるの見たこと無いのが困りもの・・。

 

(5)開拓者たち クーパー 岩波文庫 

映画にもなった「ラスト オブ モヒカン」のナッティ・バンポー(ホークアイ)を主人公

にしたシリーズ(レザーストッキング物語)の1編。シリーズ中最初に刊行された本作品で、

70過ぎのバンポーは、開拓により森と動物、彼らに依存したハンターたちの生活が失われて

いくことを、諦めつつも抗う、老ハンターとして描かれる。著者の立場はバンポーとは異な

るにもかかわらず、自分と森のルールにしたがって生きる老人の無学だが強さと優しさを秘め

た生き方を、憧憬をこめて描いた好著。モヒーガン最後の酋長チンガチグックの死のシーンはぜひ読んで

おくように。個人的には「ラスト オブ〜」よりずっと好き。ハンターとしての生活を選んだ大島もいつかは

文明化と老いによってその生活を手放さなければ成らなくなるのだろうが、そのとき彼はどのような思いで

銃を壁にかけるのであろうか。

 

(6)笑ってよ、北極点 和泉雅子 文芸春秋 

日本人女性初の北極点到達者になった女優和泉雅子の2度目の北極行きの記録。前回の失敗の

教訓を活かし、隊の編成や自分のポジションを見直す(連れて行ってもらうだけのお客様から

若干向上)などして、北極点到達を果たした。観光といえば観光だが、人とお金さえあれば誰

でも行けるという批判はちと的外れな気もする。前回失敗してるんだから、普通の人は2回目

はやらないよな。大島は準備の段階で一部協力していたようで、準備段階のエピソードで登場

する。「エスキモー〜」にも描かれているように、比較的シニカルな眼で隊を眺めているようで、生活者

大島からすると北極点遠征などすでに興味のある事ではなかったのかもしれない。

 

(7)オーロラに駆けるサムライ 谷有二 山と渓谷社 

開拓期のアラスカにその卓抜した体力と行動力で伝説的な犬橇使い(マッシャー)として知ら

れていた、日本人がいた。グレートと呼ばれる犬橇使い、エスキモーのキング、卓抜した鉱山

師としてアラスカ中に名を轟かせ、忘れ去られたJames Wadaこと和田重次郎の伝記小説。

アラスカ州の「黄金の心臓(Golden Heart City)」と呼ばれるフェアバンクス市は、重次郎の

犬橇によってカナダのドーソンに伝えられた金鉱脈発見のニュースが引き起こした「タナナ・

スタンピート」と呼ばれるゴールドラッシュによって成立、発展した。アラスカを愛し、厳しい自然環境の中

を己の身一つで生き抜いてきた、強くたくましい明治男の伝記であり、ゴールドラッシュと日本人の関係や、

犬橇使いの歴史を知ることもできる面白い本です。

 

(8)デルスー・ウザーラ ウラジミール・アルセーニエフ 長谷川四郎 河出文庫 

軍の命を受けシベリア、ウスリー地方調査探検隊の隊長アルセーニエフは、原住民であるゴリド

人の猟師デルスーと出会い、探検の道案内を依頼する。生涯を山に生き、山で生き抜くための

観察力と豊富な経験を有すデルスーは何度も探検隊の危機を救う。しかし、山に生きる男たちと

獣達の生活の場であった山河も文明と開発の波に洗われ、失われる運命にあった。著者である

アルセーニエフが原住民の老猟師に抱く、敬愛と感謝と愛惜に満ちた名作。ハンターものとし

ては外してはならない一冊である。黒澤明監督の手によって作られた映画も黒澤の苦闘と昇華の感じられる

傑作だが、原作には映画にはない独特の深みがあるので、一読をお奨めします。

 

関連人物

植村直己 ・ピーター・ペアリー ・カーウンナ ・五月女次男

 

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