流され者
羽山信樹氏が生み出した、スーパー伝奇時代小説!
幕末期、流刑の島八丈島を舞台に、和製スーパーヒーローの
華麗な愛と壮絶な死闘、
そして壮大な野望が展開する。
同じ雑誌に連載されていた、荒俣宏の「帝都物語」の
主人公『加藤保憲』にまさるとも劣らない、
主人公『壬生宗十郎』のキャラクターが超絶!
これまで誰も描いたことがない、己の価値観にのみ沿って
社会の規範や道徳を微塵も省みない
人物像は驚異的。
「大菩薩峠」の机龍之介より、確信犯なところがたちが悪い。
その孤高のキャラクター設定故
「感情移入できない」とか「主人公が悪人なのはちょっと・・」
という向きもあるが、
おいらは大好きさ!!
インテリ系グラマラスヒロイン「つばき」の設定もイカス。
異人との混血児って設定は、鎖国時代にはないだろ
と思っていたが、幕末期は結構外国の船(特に捕鯨船)が
日本に漂着した例が多々あり、
一概に無茶な設定というわけでもない。
まぁ、一般の人はそんなこと知らないから、やっぱ無茶といえば無茶なんだが・・。
ちなみに、ペリーが日本にやってきたとき対応した大通事
「森山栄之助」は漂着したアメリカ人から英語を学んでおり、
実際の交渉は「日本語−オランダ語−英語」の
2重通訳で行われているにもかかわらず、翻訳を担当している本人は
ペリー等のひそひそ話まで筒抜けだったとのこと。
鎖国とはいえ幕末期には、一部の人間は語学だけでなく、
科学や海外事情にも通じていたわけで、そういったとを
知っても、なお楽しめる懐の深い作品である。
著者の羽山氏もこれからどんなに凄い作品を書くのだろうかと、
わくわくしていたが、その後パッとせず、
マイナーな時代小説家に甘んじている。
『妖しき者』が唯一それらしさを感じさせる伝奇小説なのだが、
徳川初期という時代設定(つまり、大きな歴史的転換はない)や
南朝正統思想といった、今となっては
どーでもよい設定を用いており、
かなり小さくまとまった作品になってしまった。
第一、主人公が殆ど感情の起伏のない人物
つ−のが痛いよな。
これまで書かれていない時代を書こうとして
つまらない処に落ち込んでいる気がする・・。
NHKの大河ドラマも「戦国時代」と「幕末」以外は
常に視聴率が低いことに、
早く気付くんだ、羽山信樹!!
多くの人は、知らない人物には興味ないんだよ〜。
えっ、お前がいうなって・・。(^^;
角川ノベルズ版もあるが、どうせ手にするのなら
角川文庫版をお薦め。
当時、人気も実力も絶頂時にあった
故ペーター佐藤氏のパステル画による、
表紙の美しさ。
これほど美しい表紙を持った時代小説は、他にはない。
佐藤氏が若くして亡くなったことが惜しまれる。
ちなみに、サイトウプロによる劇画もでてます。小説とは別だよ
との断りが書かれてあるものの、事実上同じ。
どう見ても『ゴ○ゴ13』顔の壬生宗十郎が気になるが、
慣れれば気にならなくなりますわ〜。
こちらでは、小説では書かれていない『明治編』も進行中
ですので、一読をお薦めします。
続編の『メリケン編』『イスパニア編』『イタリア編』は
どうなったかって?
大人なら、そんなところを突っ込んじゃぁいけません。(^^;
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