リチャード.F.バートンRichard Francis Burton)

(1821.3.19〜1890.10.20)

 

 

 

注目理由

イギリスに生まれ、ヨーロッパ各国と放浪して育ち、大学中退後、自ら志願してインドに渡る。

その後、アラブ、アフリカ、南米と世界中で生活。生存中は19世紀を代表する冒険家の一人と

見なされながら、その奔放さから当時の政府や、上流階級とは相容れず、辺境地の領事として

晩年を過ごした人物。死後は「千夜一夜物語」の翻訳に代表される、東洋文学の大研究家として

知られている。36カ国語を駆使し、著作に記された注釈から伺えるよに驚異的な頭脳と情報量、

そして生命力(つーか、パワー)の持ち主。

 

 おいらは、「千夜一夜物語」の膨大な(それでいて本筋とはあまり関係のない)注釈の面白さに

はまり興味を持った人物。『イスカンダル』が『アレキサンダー大王』の事って知ってました?

「あぁ、大遠征とかけてるのか・・」と納得した次第ですが、この注釈がまた本文とはほとんど

関係がないの。情報を持っているので、提示せずに入られないって感じ?「マカロニほうれん荘」

で、きんどーさんが言ってた、「知性が溢れちゃうから、バケツで掬わないと・・。」とは、

まさにこのことかって思いました。その才能の無駄づかいつーか、浪費度合いの凄さがお気に入り

の人物です。

 

まぁ、知性も人間性も悪くないんだろうけど、ここまで自分中心に生きてると、社会からその能

力に応じた正当な評価を受けることは難しいでしょうね。世界を制していた英国19世紀を象徴

する超人の一人です。

 

参考文献

(1)            バートン版千夜一夜物語1〜8 大場正史 河出書房

残念ながらおいらの持ってる1〜3巻は箱のイラストが剥ぎ取られてるのです・・。(>_<)

 

奥方に浮気されて女性不信に陥った二人の王様が、自分より遥かに力のある魔人にさらわれてきた

女でさえ隙を見ては浮気してることを知り、女は「1回やったら殺す」ことにする。(←おいおい)

国から若い女はいなくなり、国中に王への怨嗟が満ちる中、大臣の娘で聡明と博識を兼ね備えた才媛

「シェラーザード」が夜伽の後で王の興味を引く話をかたることで、処刑を一日伸ばしにしてもらい

千一夜目に改心した王様と心から結ばれるつーお話。

 

シェラーザードの語る話で全編埋め尽くされているが、イスラム教のイメージで想像されてるような

「男尊女卑」な話はほとんど無い。なぜか「情熱的だが、金と力がない美少年(美青年)」と「情熱

的で、才色兼備な美女(姫が多い)」とが、アラーの思し召しでお互いに愛し想い合うようになり、

まぁ、色々なトラブルを経て、悪人は打ち倒され、死ぬまで仲良く暮らしましたとさ、つー話が多い。

女性(ヒロイン)のほとんどが才能豊かで生活力もあり、往々にして武術の達人だったりするのに対し、

男の方は情熱はあるが甲斐性無しな奴が多く、女性が読んでも充分に楽しめる内容だと思いまする。

上記のシェラーザードと王様の関係がそれを象徴しているとも言えますな。女に比べると、男なんて

バカみたいなものってことですかぁ?(^^)

 

とはいえ、話の中身は、艶談あり悲劇、喜劇、教訓、童話などなんでもあり。元は語り物なので、

全盛期のジャンプ連載漫画顔負けに、話があっちこっちにとび、思いがけない伏線とからんだりして

実に楽しい。歌舞伎や講談物、今なら連載漫画のノリですか。このバートン版は、バートンの脚色に

より、オリジナルより華やかで大げさなところを楽しむ本。「そこまで聞いてねぇよ・・。」つー、

おびただしい量の注釈も注釈好きのおいらにはうれしい。7巻の巻末には各国での翻訳の歴史なども

紹介されている。また、アラジンと魔法のランプネタは、廉価版には掲載されていないので、読み

たい人はこっちを読むように。

 

千夜一夜といえばHな挿絵付きが基本だがこの本は当時裸体画をかかせたらNo.1とうたわれた「古沢

岩美」氏のエキゾチックで妖艶なイラストが満載。この絵だけ楽しむつーのも一つの楽しみ方だよな。

最終巻には、訳者でバートン研究者の大場正史氏によるバートンの略伝解説付き。かなーり贔屓目

書かれているがこれはこれで貴重。

古本だと全巻そろいで5000〜1万円くらいか?おいらも5000円で入手。絶対に損はしないと思うよ〜。

 

(2)探検家リチャード・バートン 藤野幸雄 新潮選書

千夜一夜物語の訳者としてのバートンだけでなく、今は忘れ去られた、ナイル河の

源流探索者、当時異教徒に対して、厳格な鎖国主義をとっていたメッカから生還した

数少ない白人等の経験を持つ冒険者、探検家としてのバートンや未開地だった南米、

アフリカ諸国の領事としてのバートンが描かれる。

(1)  の本の略伝では、惜しいところでナイル源流発見者の名声を逃したことや、領事

として正当な評価を得られなかったなど、バートンの悲劇性を強調しているが、領事時代に関しては

この仕事振りじゃぁ、外務省は怒るよなってのが正直な感想。能力は高いのだが、奔放な生き方が

身に染みついてしまっており、エネルギーを長期的に投入しつづける目標を絞り込めなかった感がある。

 

(3)バートン版千夜一夜物語(廉価版)1〜10 大場正史 河出書房

(1)の本の廉価版。最終巻の小話と略伝を省いたもの。内容が同じなのに何で持ってるかといえば、

表紙が新たな書き下ろし作品だから。いやー、やっぱ「古沢岩美」さんのイラストは良いですよねぇ〜。

千夜一夜は基本的にいろんな意味で大人になってから読んだ方が良いと思います。かなり危ない内容

も多いので、最低でも高校生以上じゃないと存分に楽しめないと思うんですが、どうでしょ?

有名なシンドバットの冒険すら、相当いってます。(^^;

 

(4)はてしなき河よ我を誘え フィリップ.ホセ.ファーマー 早川SF文庫

ファーマーによる大作SF。過去から未来を含む、亡くなったすべての人々が「リバー

ワールド」と呼ばれる世界に再生された。誰が何のために、行ったことなのか?

ツー謎に、再生されたバートンが持ち前の頭脳と「無茶な行動力」で挑む。相当無理

のある、いつ破綻してもおかしくない設定が知性と暴力的魅力をあわせもつバートンを

主人公に置いたことでギリギリのところで釣り合った、楽しい作品にしあがっている。

アメリカ人にはバートンって身近な存在なのでしょうか?そこんとこがちょっと謎。バートンのキャラ

を知ってると、その分だけさらに楽しめると思います。

4部作中の第1作目。この後「わが夢のリバーボート」「飛翔せよ果てしなき空へ」「魔法の迷宮」と

続く。おいらは「リバーボート」を4回挑戦後ようやく突破し、「飛翔せよ・・」の上巻で小休止中。

だってバートン出てこねーんだもん。なお、marudaiさんからの情報によるとThe Gods of Riverworld

という未訳の5巻があるとのこと。こらー、最後まで訳さんか〜、早川書房〜!

 

(6)バートン版カーマ・スートラ 大場正史 角川文庫

インドのハイカーストでは「富(アルタ)」「徳(ダルマ)」「性(カーマ)」のが満た

され、調和がとれている状態を最良とする。その3つのうち性(カーマ)に関する考え方

やテクニックを紹介した聖典(スートラ)。ビクトリア時代においては、刺激的な内容

だったかもしれないが、今となってはそれほどでもない。過度な期待をすると、たぶん

がっかりする。まぁ、挿絵が無いのも痛いよな。

しかし、当時の風俗書として割り切って読むには楽しい本。男からできる限りの金を巻き上げる方法

とか、金が無くなった男と別れる方法といった「え、それメインテーマから外れてるんじゃ?」

つーネタも盛りだくさんで笑える。

 

(7)反芸術アンパン 赤瀬川原平 ちくま文庫

トマソン、新解さん、老人力等の著作で知られる才人「赤瀬川原平」氏が自ら

が現代芸術の最前線に飛び込むきっかけと成った、審査なしで誰でも参加できる美術展

「東京アンデパンダン展」のエピソードを追いかけたもの。エッセー等、独特の視点と

笑いで読ませることの多い原平作品の中では、過去への哀愁と惜念を感じさせる異色作。

おいらにとっては「ちょっとさわっていいですか」「超芸術トマソン」と並ぶ大好きな

作品である。巻中に原平さんによる古沢岩美氏へのインタビュー有り。いかにも画家って感じの古沢

氏を見ることが出来る。続編に「東京ミキサー計画」があります。

 

(8)アフリカ探検物語 那須国男 現代教養文庫 

いまは亡き教養文庫から出てた文庫本のアフリカ探検史2章までは教科書並みの無味乾燥

な文章が続き挫折しそうになるが、そこを根性で堪えると、「本格的アフリカ探検の祖でピ

ンチには地元女性に助けられまくり(もてもて)な英国人」とか「イスラム教徒に変装し、

幻の街トゥンブクトゥから生還した無学なフランス青年」「中国での布教が夢だったのに、ア

ヘン戦争でアフリカに回されちゃって、そのまま大探険家になり、しかも家族連れで探検して

る男(=リヴィングストン)」ら、個性的でパワフル&ロマンティックな男たちの列伝となります。時系

列に沿って記載されてるので、わかりやすい上に面白い〜。

バートンはスピークとともに「第Z章白ナイルの水源究明に挑戦した人々」に登場。つーても「愛と野望〜」

を見てもわかるようにバートンは病気でほとんど寝てるので主人公はスピーク。彼のナイル水源探しに

おける大きな業績が良くわかるのでお奨め。

 

映像作品

(1)愛と野望のナイル ボブ・ラフェルソン監督 P・バージン、イエーン・グレーン主演 

共にナイル源流を求めて、アフリカを探検したバートンとスピークの友情と対立、その

悲劇的結末を描いた作品。二人とも良い人過ぎますし、映画用に史実をちょっといじって

ますが、なかなか面白かったです。内容が地味なので、感情移入できれば凄い感動するの

でしょうが、だめだとわからないままズルズル行っちゃうかも。バートンのキャラは、フェ

ンシングの達人という点とかも押さえてて、及第点。女房にあんな態度取られたら本人だと

絶対殴ってると思いますが、映画の中の女性が強いのは現代ではしかたないですね。

この時点で25カ国語を使えるはずなのに英語しか話さないのは、まぁご愛敬。アメリカ映画だしね。

個人的にはスピーク役の役者さんが良かったですねぇ〜。白ナイルの源流に関してはヴィクトリア湖に

到達し、2度目の遠征で北に流れる河口を確認したスピークの業績の方が大きいのですが、その辺りが

 あまり書かれてないのは、ちょっともったいないですね。

 

関連人物

     リビングストン ・スピーク ・スタンリー 

 

関連リンク

アラジン輪舞曲 ・・・千夜一夜を軸に中東の文化や歴史を美しい絵で楽しく紹介。

 

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